しおりの吠えたガール＠鬱屈ナイト

　祖母が自力で唾を飲みこめず、ひどく咳をするようになった。これまではさきっちょに綿のついた棒（通称くるくる）で口内を掃除していたのだが、それだけでは事足りず、吸入マシンを購入することになった。口内にカテーテルを挿入して、唾を吸い出す。これが意外に楽しいんである。以前に祖母の鼻をピンセットでとるのが好きという話を書いたことがあるが、感覚としてはあれと似ている。音が変化するぶん、吸入マシンのほうが愉快かもしれない。カテーテルが唾をとらえると、がああという音がごおおとくぐもり、とれました！という手応えがあるのだ。もちろん祖母の咳も止まる。楽になってよかったねえ、と頭を撫でると、心なしか穏やかな表情になる。それでも今日、看護士さんが吸入するのを見ていたら、私はまだまだ未熟だということがよくわかった。やはりプロはほれぼれするほど上手い。じっと観察していくつか技を盗んだので、次回の私に乞うご期待だぜおばあちゃん、と宣言しておいた。

　夜は友人とベルギービールを飲みに行く。見事、ベルギービールしか置いていない店だ。ビール専門店というのはえてして料理がまずいのだが、ここのはなかなか美味しかった。アルコール度数が高いのを4本も飲んでしまって、たいそう酔っぱらう。雨は依然として止まず。歳をとって、雨が堪えるようになった気がする。