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2007年11月10日

カタカナ: メヌエット minuet

 レコード会社の人に「三拍子の楽曲は売れない」という話を聞いたことがある。メロディが耳に残りにくいのだという。あるいは日本人のリズム感と関係があるのかしらないが、思い浮かべてみると、確かに三拍子の歌謡曲は少ない。『部屋とYシャツと私』は三拍子だった。スガシカオや中島美嘉の曲にもあったように思うが、名は忘れてしまった。童謡でいえば『ふるさと』や『ぞうさん』なんかは三拍子だが、圧倒的に四拍子の曲が多い。三拍子というのはそもそも舞曲に用いられるリズムであり、雅楽のように拍子のない音楽に親しんできた日本の土壌には馴染まないのかもしれない。
 ちなみに『君が代』にも拍子はない。リズムのない国歌を歌うのは、世界広しといえども日本だけである。要は『君が代』は軍歌ではないということだ。たいていは国民の士気を高めるための勇ましい行進曲なのだが、『君が代』は神を賛美する曲で、皆で合唱する必要がないから拍子も要らない。グレゴリオ聖歌と趣が似ているのはそのためだと思う。
 話は戻って三拍子だけれど、これがクラシックになるとぐんと増える。ラベルの『ボレロ』にビゼーの『カルメン』、ウィンナーワルツなんて言うまでもなくすべて三拍子である。メヌエット(minuet)も三拍子である。これは「小さい」という意のフランス語が語源だが、踊りの歩幅が小さいことからそう名付けられたと言われている。スケルツォ(scherzo)も三拍子。これはベートーベン以降にメヌエットの代りとして定着した楽曲だが、メヌエットに比べて速度が早く軽快なのが特徴。イタリア語で「冗談」という意味。ショパンのピアノ曲にも有名なスケルツォが数曲ある。ワルツ(waltz)はドイツ語のwalzen「くるくる回る」に由来している。日本のポップスにも、江利チエミの『テネシー・ワルツ』のように「ワルツ」を冠する楽曲がちらほらあるが、よほどのことがない限り三拍子である。

投稿者 shiori : 17:04

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