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2007年09月05日

カタカナ: ビール vol.2 beer

 引き続き、ビールの話。
 ビールは酵母の種類によって二つに大別することができる。
 ひとつは下面発酵酵母のビール。低温(10℃以下)で長時間かけて発酵させて、最終的に酵母が下面に沈み込むのでこう呼ばれる。貯蔵ビール、ラガーとも言われる。ラガー(lager)とは英語で「貯蔵、倉庫」の意、ドイツ語のlargenが語源だ。発祥地はドイツのバイエルン、さっぱりとしてきれのよい飲み口が特長である。日本のビールはもちろん、現在世界で生産されるビールの約9割がこのラガータイプなのだが、実はその誕生は19世紀と歴史が浅く(冷蔵庫の発明以降ということ)、ビールとしては新参者である。
 それ以前のビールは上面発酵酵母を使っていた。常温(20℃)で短時間発酵させて、炭酸ガスをたくさん出して、発酵終了時には酵母が上面に浮き上がる。下面発酵よりも製法が簡単だとか。別名、エール(ale)とも呼ばれ、イギリス、ベルギー、オランダ、などでは現在でも根強い人気がある。味やこくが個性的で多種多様。
 補足をすると、エールは「苦い」という古英語で、「麦酒」を示す言葉としてはビールよりも古い。その昔はホップを入れた腐りにくい麦酒をビール、ホップなしをエール、と区別していたようだが、そのうちエールにもホップを入れるようになり、ビ−ルとエールの質的な区別はなくなった。現在の通例では、エールといえば上面発酵ビール全般を指すようだ。
 さて、ひとえにロックといっても、ハードロック、グラムロック、パンクロック、と様々な流儀があるように、ビールにもスタイルがあって、それぞれ特有の味や香りを持っている。さしずめ上面発酵/下面発酵の区別はブリティッシュ/アメリカンの区別といったところ、ほとんどのスタイルがそのどちらかに属すことになる。そして淡色/中等色/濃色の色合いでさらに分類できるのだが、これはブルーズの影響の濃淡に似ている。話が余計ややこしいか。
 日本のビールの多くはピルスナー(pilsner)というスタイルで、これは下面発酵・淡色に分類される。チェコのピルゼン地方の発祥。レストランで時々見かける「琥珀の時間」という褐色ビールがあるが、これはドュンケル(dunkel)というスタイルで、下面発酵・濃色ということになる。
 上面発酵・淡色で有名なのは南ドイツ発祥のヴァイツェン(Weizen)。これはドイツ語で「小麦」の意、その名の通り原材料に小麦を使用していて、バナナの香りがするフルーティーな仕上がりになっている。銀河高原ビールはこのスタイル。よく耳にするスタウト(stout)は上面発酵・濃色のビールである。「強い、どっしりとした」という意で、元祖はかの有名なアイルランドのギネス。トラピストもこの分類だ。
 その他、ペールエール、アンバーエール、アルト、ポーターなど、数十種に及ぶスタイルがあるが、最近急増している日本の地ビールはエールタイプのスタイルを採用している場合が多く、勝木さんの店に行けば一癖も二癖もある日本のエールが何種類も飲めるというわけ。

投稿者 shiori : 21:54

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コメント

なるほど、エールはむしろ重厚な感じなのですね、軟派ではないと。

今日キリンビールの人と話をしていて、日本人はビールに求めるものがノド越しであることが多いのでラガーが多くなってしまうとのこと。

ちなみによなよなもレフブロンドも五反田のグラフトンでは生が飲めます。

腰を据えてじっくり飲むならエールタイプがいいですが
私も焼肉とか寿司の時に飲みたいとは思わないです
大人数の飲み会の時も、のどごしがきりっと、痛覚に訴えるほうが
アッパー気分で過ごせるかもしれません
(もうこの歳で頑張ることもないんだけど)

ところで、レフブロンド、さっそく飲みました
美味しい!
香りとコクのバランスが良くて、小粋な美女という感じでした
それからグラフトン、よなよなはこういう店で飲めるのですね
私の居住区にはないのですね、こういう気の利いた店
さっそく行ってみようと思います
美味しい情報、これからもお願いします!

好みが合ってよかったです。

ベルギービールでは一番だと思います、レフブロンド。
修道院で作っているそうで、彼らも生臭が好きなんだなぁという味ですよね。

小粋な美女。その例えいただきます!

よなよなはレフに比べると少し土臭いですが、作り手の愛を感じる味ですよ。

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