2007年07月02日
カタカナ: トング tongs
確か小学校の低学年の頃だったと思う。社会科の教科書に人々の様々な暮らしを写真で紹介するページがあって、私はそのひとつ、乾物屋(今風にいえばグロッサリー)の光景に目を奪われた。軒先に据えられたショーケースや棚に並んだ瓶の中には干し椎茸、昆布、大豆やなんかが詰まっていて、不機嫌そうなおばちゃんが客の注文を受けて紙の袋に商品を入れている。台の上には秤、彼女の手にはトング。
刹那、私はこのおばちゃんになりたいと思った。あのトングで、つかんで、つかんで、つかみまくるのだ。家に帰るとさっそく母に「あのつかむやつ買ってお願い」とねだってマイトングを手に入れた。家中のものをつかみまくったのは言うまでもない。至福の時間だった。
そのトングだが、響きから中国語かと思っていたら語源は英語だった。古英語でtang(はさむ道具)の複数形tanganがtongsと変化したのだそうだ。tong(つかむ)という動詞もある。
同じく「つかむ、はさむ」道具といえばペンチやニッパがある。でもこちらはホールドしたり切断したりという動作もできるのでトングとは印象が異なる。だいぶ重量感がある。ピンセットのほうがよりトング寄りかもしれない。「つかむ」というよりは「つまむ」だが、あのつまみ出す感触はけっこうぞくぞくする。祖母にはいい迷惑だろうけど、彼女の鼻を見るとピンセットを差し込みたくてたまらなくなる。三つ子の魂百までというか、そういうマインドって変わらないのだな。
投稿者 shiori : 14:22