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2007年04月13日

日記: 葬り方

 40cmばかり髪を切った。
 床に堆積した髪束を見るといつも思い出すのは
「アウシュビッツに到着した彼らはまず剃髪され、その髪の毛はドイツ軍艦の修繕に使われました、人毛は軽くて水を通しにくいので船底の防水には最適だったのです」
 という話で、金や銀や赤銅の毛が無造作に袋に詰め込まれて(あるいは剥き出しで)輸送される光景を想像してしばし考え込む。
 と同時にもうひとつ思い出すのは
「彼はその紙包みを受け取ると、気味悪そうにあけてみた。シェルビー氏の男の子ジョージにもらった1ドル金貨と、セントクレア氏の娘イヴァンジェリンからもらった、長い、輝くような金髪の巻き毛が中から出てきた。その髪の毛はまるで生きているかのように、レグリーの指に巻きついた。『畜生!』彼はかっとしてこう叫ぶと、床を踏みならし、その毛で火傷でもしたように、はげしくそれをむしりとった。」(ストウ夫人作「トムじいやの小屋」)
 という話で、巻き毛が良心の象徴だとかいう以前に、切り落とした髪を半紙にくるんで取り置く行為についてしばし考え込む。
 つまり髪の毛は髪の毛であって、有効利用するのも形見として崇めるのも同じくらい抵抗があるのだ。切ったらすみやかに燃やす。これがもっともエレガントな葬り方だと思う。

投稿者 shiori : 11:29

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