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2007年04月11日

カタカナ: ゴールドベルグ変奏曲1 Goldberg Variations

 バッハの鍵盤曲で何が好きかと問われれば迷わずこれを選ぶ。古今東西の音源を見つけては買い、演奏会にも5回以上出かけた。二年かけて自分でも練習した。物事に熱中しやすいたちではあるけれど、あれはちょっと異常だった。ちょうど調子の悪い時期だったので、依存していたようなところがあったかもしれない。人は実に様々なものに依存するのである。いずれにしても深い思い入れのある曲。
 変奏曲とはあるメロディ(主題)があったとして、そのメロディそのものやコード感、リズムなどを変えて聞かせていく曲のこと。モ−ツァルトの「きらきら星変奏曲」がよい例。広義的にはラベルの「ボレロ」なんかも変奏曲に含まれる。その他ベートーベンもブラームスもたくさんの変奏曲を作ったけれど、やはりゴールドベルグの完成度と魅力には到底及ばない。愛着をさっ引いたとしても、不朽の名曲と思う。
 それでもかつては隠れた名曲といった扱いで、録音を残すピアニストもさほど多くはなかった。それがかのグレン・グールドが衝撃的なデビュー録音を発表したことで、彼自身はもちろんゴールドベルグ変奏曲も一躍脚光を浴びるようになった。1955年のことである。
 この録音はとにかく凄い。「速い、若い、熱い」と三拍子揃っていて、ロックでいえばBeatlesの「She Loves You」みたいなものだ。グールドは81年に再録しているが(クラシックでは再録はめずらしくない。カラヤンにいたってはベートーベンのシンフォニィ9曲を4回も録音した)、こちらはコルトレーンの「Love Supreme」のような趣き、賢くて静謐で深遠、とても同じ人が弾いたとは思えない。どちらも素晴らしいのだけれど、強いて言えば81年版のほうが好み。
 そしてグールド以外にもこの変奏曲に挑戦するピアニストも増えた。有名なところだとダニエル・バレンボイム、カール・リヒター、ウィルヘルム・ケンプ、アンドラーシュ・シフ、キース・ジャレットなんかも弾いている。私はグールドの次だとマレイ・ペライアというアメリカ人の演奏が好きだ。
 次回はこの変奏曲に凝らされたバッハの創意工夫について少々。

投稿者 shiori : 18:27

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