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2007年01月29日

日記: すみません、それは私の

 久々に恥ずかしいことがあった。
 ジムに通い始めて6年目になるのだけれど、ずっと愛用している靴がある。NIKEの変哲ないスニーカー、踵に適量の空気が入っていて脚にかかる負担を和らげてくれる靴である。デザインは決していかしているとは言えないが、本当に履きやすくて重宝している。街中をかつんかつんといい気になって歩く靴はともかく、運動するにはなんといっても履き心地が一番なのだ。
 それで今日もビートに合わせてシェイクシェイク、ご機嫌にダンスしていたところ、ちょっとした異変に気付いた。右足を踏み込むたびに、靴が妙な具合なのである。靴底がぺこぺこしている気がする。休憩の時にそっと足裏を返して見ると、なんと土踏まずの上あたりでソールが横にぶっつり割れているではないか。しかも、自分の周りにはソールの黒いカスが大量に散らばっている。
「何かしら、床が汚いわね」とどこかのおばさんの囁き声が聞こえた。厚顔無恥と風評のある私だが、さすがに「すみません、それは私の靴底です」とはなかなか言えず、素知らぬ顔をして運動を続けた。すると今度は、手の親指くらいの黒い塊がふたつ、ひゅんひゅんと飛んで行った。どこかのおばさんがゴキブリを見たような恐ろしげな顔をして、塊を見つめている。「すみません、それは私の靴底です」とはやはり言い出せなかった。みすぼらしい弁当を蓋で隠して食べる子の気持がわかったような気がした。
 それでも私はしれっとして運動を続けた。すると今度は靴底がべろんべろんしている気がする。再び休憩の時に返してみると、なんと今度は布地と靴底が根本的に剥がれかかっていて、いわゆるスリッパ状態といえば伝わるだろうか、これほどまでの靴の崩壊を目の当たりにしたのは初めてのことだった。
 分厚い靴底が宙に舞うのも時間の問題、そう思ったらダンスどころではなくなってしまった。いきおい振り付けは乱れるわへっぴり腰になるわ、靴底が飛ばぬように擦り足で踊る私はタコのようだったと思う。ほうほうのていでレッスンを終えた私は、雑巾で靴のかすを拭き取って、逃げるようにジムを後にした。帰宅して一番にしたのは靴をゴミ箱に捨てたこと。
 意外なものが壊れると意外とダメージが大きいことを学んだ一日だった。

投稿者 shiori : 08:45

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