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2006年11月30日

日記: からっぽ

 通信販売のカタログを見ていて、男性は大変だなと思うのである。冬を彩るお洒落、なんていうタイトルで暖かそうなコ−トやマフラーを紹介する頁があった。シニア向け商品のためモデルも50代、あらぬ方向に視線を留めたり、殺菌されたような笑みを浮かべてポーズを取っている。男性も女性も嫌味のない整った顔をしていて、当然だけれど、スタイルもいい。かといって俳優のように個性的な顔をしているわけではない。服の宣伝なのだから顔が目立ってしまってはいけない、頁を閉じたはなから忘れてしまうくらい匿名的な顔でなくてはいけない。彼らは実に選び抜かれた人たちなのだ。
 しかし彼らの顔を眺めていて、女性は構わない、女の器量というのはそれだけで値千金、美しければ話が済んでしまうところがあるけれど、男性の場合はそうもいかない。若ければまだよい。若さというのも女の色と同様、それだけでものを言うからだ。しかし、還暦も近づいた二枚目が、からっぽの顔をしているほど哀しいことはない。年老いた男はただでさえもの哀しいのに、なんだか見てはいけないものを見てしまったような、いたたまれない気持になる。
 女性は顔を作り慣れているし、男性よりもずっとしたたかだから、わざとからっぽの顔を作るなんてことも悪びれずできてしまうけれど、男は女よりうんと正直だから、何かを考えていればそういう顔になるし、何も考えていなければそういう顔になる。今まで過ごした時間がそのまま顔になるのだ。大変だなと思うわけである。

投稿者 shiori : 16:23

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