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2006年10月23日

日記: N氏のこと

 N氏を初めて紹介されたのはかれこれ10年前のことである、その時は単なるレーベルの偉い人で、誰かの介在なしに話をするなんてことは考えられなかったのだけれど、紆余曲折あって現在では公私共々お世話になっている人物だ。頼まれた仕事をすっぽかすという不義理を働いたこともあって、N氏もそのことは忘れていないと思うのだけれど、忘れたふりをして仕事を回してくれる。有り難いことである。もう二度と裏切れない。
 彼は数少ない、私の才能を評価してくれる人物でもある。いいですねと褒めてくれる人はあっても、実際に仕事を回してくれる人は本当に少ない。歌を歌ってみないか、詩を書いてみないか、と様々な機会を与えてくれてはきちんとお金を支払ってくれた。最近では、文才があるから何か書きなさい、と編集者を紹介してくれたりするほどで、その期待にちっとも沿えていない自分が腑甲斐ない限りなのだが、とにかくN氏の尽力には感謝感激アメアラレ、ますます裏切ることはできないと思う。
 実はN氏はその世界では相当名の知れた人である。日本にATLANTIC LABELを持ち込んだのは彼だったし、日本にブルース・ブラザーズを招聘したのも彼だった。SOUL MUSICを死ぬほど愛していて、その普及のために尽力し結果を出してきたわけだ。しかしながら普段付き合うぶんにはそういうことは関係ないので、優しくて短気、ハートフルなのだけれどお腹が減ると機嫌の悪いおじさんという感じで、まあ楽しくお付き合いさせて頂いている。しおり、おまえ、ほんと、よく飲むな、と呆れられた回数はカウントレスである(ちなみに彼はGECO)。
 そのN氏のお父さんがお亡くなりになったので、お通夜に参列した。頂いた地図に「東上セレモニーホール 鶴が丘」とあって、果たして首都圏なのかと疑ったというのは失礼なのだが、正味な話、精神的には圏外であった。雨のそぼ降る夜に喪服を着て見知らぬ駅に降り立つというのは土スペあるいはホラーの世界というのもまた失礼なのだが、心もとないことこのうえない。それでも赴いてお焼香をしてきてよかった。むろん恩着せがましく言うつもりもないし、何かを期待しているわけでもないけれど、N氏は人からしてもらったことを忘れずにお返しをする心意気のある人だ。そういう人に何かをしてあげるのはちっともやぶさかでない。むしろ喜びである。

投稿者 shiori : 17:35

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