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2006年10月11日

日記: 猫時間

 窓の外を見ると、今日もまたいつもの屋根の上で猫が寝そべっている。昨日は黒猫だったが、今日は黒とグレイの縞猫である。今はまだ朝早いので肌寒く、猫は縮こまっているけれど、日が高くなるにつれてのしイカのような格好になるのだろう。どうやらあの屋根の上は界隈の猫の間ではヴィップ席なのかもしれない。昨日の縞猫なんかは塀の陰から屋根をのぞいて「先を越された」と舌打ちしているかもしれない。次の機会にがんばってもらいたい。
 私はいわゆる猫好きではないけれど、猫を見かけると自分でも驚くほど親密な情を感じずにはいられない。隣に猫が寝そべっているだけで、こちらにも猫時間が流れるから不思議だ。ある種の達観といおうか、相手に期待しない凛とした佇まいがなんとも胸を打つ。それで私も色々なことが気にならなくなって、自分の本当にやるべきことはそう多くはないような気分になるのだ。
 人間同士でそういう関係を築くのは至難の業である。普通相手のペースに巻き込まれると不快に感じるものだからだ。振り返ってみるのだけれど、猫のように自然に時間の流れを変えてくれるのは祖母ぐらいである。
 彼女は最近ではほとんど声を発しなくなってしまった。じっと一点を見つめているか、すうすう寝ているか、あくびをしているか、まあそんなところである。日々の運動量は私の一分間分くらいではないか。それでもあれこれ世話をしてあげると、にっこり笑って「ありがとう」という口をする。その笑顔のなんと清々しいこと、私が一時間喋っても伝えきれないことをさらっといいのけてしまって。
 猫を眺めているとそんな思いが行ったり来たり、猫時間をたゆたうのだった。そのうち飼うことになるのだろうな。

投稿者 shiori : 10:34

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