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2006年09月16日

日記: 重さのわけ

 秋祭りである。道の両脇に出店が並び、御神輿や山車が出る。はっぴを着た若い衆が威勢のいい声をあげて町内を練り歩く。興奮した子供たちがそこらをかけずり回る。実に原始的な風景だと思う。
 昔から祭りが楽しみで仕方なかった。太鼓や笛の音が聞こえるだけでそわそわして何も手につかない。私の育ったあたりは下町なので祭りは本当に賑やかだった。子供用の御神輿を担いだり、お菓子をもらったり、皆で銭湯に行ったり、あの胸躍る感じは忘れられないのだが、とりわけ印象的なのは大人の男衆の格好良さだった。
 金色に輝いた大きな御神輿をしかめっ面でかいてみせて、子供がちょろちょろしていると危ねえからどいてろと声を荒げ、そいやそいやと野太いかけ声が響き渡る。はだけたはっぴからは分厚い胸板がのぞき、頭にはねじりはちまき、足袋を履いたたくましい足がまとまって通り過ぎていくのをどきどきしながら見ていた。大人の男が無性に格好良かった。
 もちろん当の男衆もたいそう気分が良かっただろう。重いものを担いでいるというだけで気持は高揚するのだし、ましてや沿道の婦女子たちに見つめられているのだから悪いわけがない。相当の晴れ舞台、ずいぶん気合いをいれていたはずだ。
 このシンプルさがとてもいい。結局のところ祭りは男がセックスアピールできる場なのだ。重いものを担ぐ姿を見るだけで、子供は大人に憧れ、女は男に憧れる。男の魅力の基本は何といっても力持ちであること、だから御神輿は軽くちゃいけない、どこまでも重くなくちゃいけない、無意味なまでに重いことに意味があるではないかと思ったりした。

投稿者 shiori : 09:59

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