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2006年09月28日

日記: Je suis patron

 ぷらぷらと書店を見て回り目についた文庫本を買って帰る。最高の愉しみである。台所の都合でハードカバーをばしばし買うわけにもいかないし、かといって図書館の本は他人の匂いがついていて落ち着かないので、妥協案として文庫を買うわけだ。月に5、6冊というところだろうか。
 私の読書はかなりいい加減なもので、一冊の本を一息に最後まで読むことは少なく、何冊かを同時進行でちょこちょこ読む。作業の合間やなんかにそこらにある本を手に取って飽きるまで読むのだが、これがわりとすぐに飽きる。だから複雑な筋の小説は適さないので、自然と随筆か軽めの小説ということになる。
 むろん本格的な小説を読まないわけではない。こちらは「さて、読みますか」という感じで数時間集中して読む。もちろんハードカバーである。そこにはささやかながら私の流儀ようなものがあって、本当に読みたい作品と初めて読む作家の本はハードカバーで買うことにしているのだ。好きな音楽家のCDは決してレンタルしないというのと似ていて、作品を完成させた才能と努力に敬意を払うという意味で高価なハードカバーを買うのである。弱小ではあるけれど、私はパトロンなのだ。
 人が作品に金を払うというのはすごいことだ。作り手は額に見合うように作らざるをえない。そのプレッシャーがよりよい作品を産むことになり、結局買い手はさらにいい思いができるという理屈である。そして当然だけれど、おもしろくなかったら次からは買わない。たかが本とはいえ、きったはったの世界なのだ。
 そういう仕分けに基づいて、今月買って読んだ本。

・内田百けん『百鬼園随筆』
 自然と顔がにやけて胸がとくとくするほど好きである、今年出会った作家の中で一等賞
・開高健『小説家のメニュー』
 そんなことは一言も言っていないのだが、非常にエロい
・伊丹十三『女たちよ!」
 そんなことは一言も言っていないのだが、この世がくだらなくなってしまって自殺したのかしらと思った
・壇一雄『壇流クッキング』
 脇に置いて思い出したように一項目読んで頁を閉じる 楽しい!
・村上春樹『パン屋再襲撃』
 あらかた読み尽くしている中で読み落としていた短編集('86年刊) その年齢でないと書けないことや出せない雰囲気があるのだと実感
・群像創刊六十周年記念号
 まだ数作品しか読んでいないがやはり町田康が最高 作品を出すたびにポパイのように強くなっていく
・江國香織『赤い長靴』
 ニュアンスに満ちていて読んでいると眠りたくなる 眠くなるわけではなく生きるのが面倒になる感じである
・金原ひとみ『オートフィクション』
 非常におもしろい ギャグセンスが思いのほかよく時々声をあげて笑った 次の作品が楽しみな作家リストに加える
・森博嗣『少し変わった子あります』
 彼のブログを読むのが毎朝の楽しみなのだが小説を読むのはこれが初めて 今年出会った作家第二位

投稿者 shiori : 11:38

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