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2006年08月07日

日記: しぶい

 鮫洲のしぶい飲み屋で飲む。このあたりは京浜急行のかぐわしい匂い溢れる地区、海岸端に立ち並ぶ倉庫群で働くスウェッティな野郎どもの彷徨する街、などと花村萬月のようなことを言ってみるのだが、要は、味付けが濃いのだった。大井競馬場内の食堂もかなりソルティだったが、この店もなかなかのものである。まあ、飲みながらつまむ程度なら問題はないのだけれど。
 冒頭で「しぶい」という形容詞を用いて、その判断基準は何だろうと考えてみるのだけれど、灰皿がスチール製であること、水着を着用した女性が砂浜で生ビール片手に微笑んでいるポスターが張ってあること、トイレが男女共用であること、有線がかかっていること、だろうか。この条件をすべて満たしていれば「しぶい」といって差し支えないだろう。東京あたりでは少なくなってきたが、地方に行けば、それも政令指定都市以外に行けば、たいがいの店は宿命的にしぶく、私はそういうのが嫌いではない。
 豚キムチ炒めだの甘海老の唐揚げだのを食べながら、どういうわけか童貞を失うか失わないかの時代の話になった。失って久しい男性たちが時期が早かっただの遅かっただの、昔を懐かしむのは微笑ましいので楽しく聞くのだが、自らの口から語られる武勇伝というのは、たとえそれが本当であったとしても眉唾物に響きがちで、語れば語るだけ損だなもの、しかし男ってのはいくつになっても自分を大きく仕立てるのが好きな生き物ですね、気前のよい女は惜しみない賛辞でもって応えるけれど、それを間に受けるところが男のかわいらしさでもある。

投稿者 shiori : 18:26

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