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2006年07月26日

日記: 世渡り上手

 来週、祖母が退院することになった。回復したとも悪化したともいえるおかしな話、というのも入院した結果脳梗塞は収まったものの、歩けない、喋れない、飲めない、という凄まじい後遺症が残ってしまったからだ。い細かく砕いてとろみをつけた食べ物ならば食べられるが、やはり水を飲むとむせてしまう。だから鼻から管を通して、水分を補給することになった。
 その管というのは鼻から胃まで通っていて、白湯を入れた点滴パックとつないで水分を流し込む。しかしその管がきちんと挿入されていないと、肺に水が入って溺死するなどの事故になるので、聴診器で音を確かめて慎重に行わなければならない。点滴パックや管なども毎回ミルトンで洗浄して清潔を保つ。それを毎食後に一日三回行う。
 「というのを、ご家族の方、お願いします」と言われて目が点になった。祖母はもうトイレには行けないので完全なるおむつガールだし、起こしたり座らせたり着替えさせたりするのも一苦労なのに、ぎょえええ、母は「もう老人ホームよ、ホームホーム」と一応抵抗したが、祖母が「よおしうおねがえしあす」と涙ながらに訴えたので、母も私も慈愛の気持が満ちあふれて、結局連れて帰ることになった。真の世渡り上手。
 それでも鼻に管をつけて、ほうけたように天井を見つめている祖母を見ていると、死ににくいのも気の毒に思うが、それでもやはり生きていればそれなりの喜びがある、というしかないじゃないですか。

投稿者 shiori : 15:51

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