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2006年07月08日

日記: あうあわあうあう

 朝起きて祖母の部屋をのぞくと、いつもの調子で寝ていたので、「おばあさん、おはよう」と声をかけると真面目な顔をして「あうあわあうあう」と言う。まあ、おばあちゃんたら朝から何よ、と笑うと、必死の形相で「あうあわあうあう」と繰り返す。ん?、と首をかしげて、あっ、これはまずい、祖母が喋れなくなっている、と気付いて、大慌てで救急車を呼んだ。
 家の者がみな遠方に出払って私ひとりだったので、どきどきした。以前にも書いたけれど、救急待合とはげに憂鬱な場所、皆ほうほうのていで助けを求めに来ているのであって、叫び声や泣き声がそこらに響いていて生気が吸い取られる心地だ。
 しばらくして名前を呼ばれて中に入ると、祖母が横たわっていて、私の顔を見て「あうあわあうあう」と言った。絶望的な気分になった。先生の見立てによると、やはり彼女は脳梗塞を起こしたようだった。即入院になり、一年ぶりにまた病院に戻ってくることになってしまった。
 口や喉の筋肉が麻痺が残り、話したり食べたりするのが難しくなるだろうとのことだった。昨日まであんなに元気で、にこにこおしゃべりをして、鯖や鶏肉を頬張っていたというのに、目の前のおばあちゃんは何を言っているのかさっぱり理解できないし、天井をぼおっと見つめたまま、能面みたいな顔をしている。泣きたくなった。おうちに帰れる日が再び来るのか来ないのか、でも何はともあれ、今、祖母はきちんと生きていて死んでいない、ということが重要だ。

投稿者 shiori : 12:17

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