« almost | ホーム | 怒る »

2006年07月04日

日記: アノニマス

 三軒茶屋でMさんとSさんとその息子とランチをする。太陽のぎらぎらしている日だったので、というか曇天の寒空でも同じなのだけれど、ビールを飲んだ。男衆がえっさほいさ働くわきで昼間からいいご身分だわねえ、と一応口にはするが、内実ちっとも悪びれないところが女の厚かましさである。そしてその厚かましさを一応からかうが、内実どうでもいいと感じるところが男の甲斐性である。女でよかった。

 お昼時、財布を小脇に抱えて信号待ちをしている会社員をよく見かける。たいていは2、3人でやんわりとかたまっておそらくは他愛ない話をしていて、でもなぜか皆一様に腕組みしていて、結局のところお互い好きでもなく嫌いでもない感じで、そういう風景を見ていると私はその種の苦労をすっ飛ばしてきたのだなあと思う。苦労したほうがいいともしないほうがいいとも思わない、しなかったなあと感じ入るだけのことなのだが、不思議なことにそういう感情は、会社員の知人と話している時よりも匿名の人々を眺めている時に持つことが多い。匿名性には実情を削ぎ落とす力があるのだと思う。
 そして信号待ちをしている彼らが何を食べて、何を考えて、何を大切にしているのか、ということをひとしきり想像する。最近はそういうことがずいぶん増えた。昔は知っている人のことばかり考えていたけれど、ここにきて知らない人のことも考えるようになった。世界の捉え方が変わったわけだが、基本的にはこれはいいことだと考えている。

投稿者 shiori : 09:56

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://freedom.s13.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/253

コメントを投稿