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2006年06月15日

日記: 『ロック母』

 注文していた葡萄酒御一行様が到着する。輸入会社の社員販売を紹介してもらって以来、案内がくれば頼むことにしている。今回は20,000円を越えないのを条件に2ダース注文した。机の上に葡萄酒が24本ずらりと並んでいるのは圧巻で、これを飲み干すのかと思うと嬉しくて小躍りしてしまうのだけれど問題は収納である。夏の暑さと湿気をどうやって乗り切るか。ものの本は、とにかくワインセラーを買いなさい、の一点張りで、ならば品質が落ちる前にとっとと飲んじまえばいいのであって、週に最低3本飲む計算でいくとお盆までには片付くではないか、よし、飲むぞ!と闘志を燃やすというのも変な話。

 角田光代さんの本はこれまでに直木賞受賞作『対岸の彼女』と『空中庭園』を読んだ。読書というのは作者の描く世界と読者の生きている世界、その二つを同時に体験する作業である。だからその作業が心地よいと感じるかどうかは、作者と読者の相性にかかっていると私は思う。共通項が多い少ないから良い悪いという単純な話ではなく、もうこれはフィーリングとしかいいようがないのだけれど、それが合わないとなると読書はおもしろくない。しかし作品として優れているかどうかはこれとはまったく別の話で、上手いけれどおもしろくない、稚拙だけれど魅力的、なんてことはよくあるのであって、角田さんの本は大賞を受賞してしかるべきと思うけれど、相性が合わなかった。
 彼女の描く世界はどこか慌てていて、不安がにじんでいて、いじけているようでもあり、読んでいて元気にならなかった。この「元気」というのも難しいのだが、何もハッピーエンドだから元気になるわけではなく、言葉の奥に透けて見えるどっしり感とか鮮やかさみたいなものと関係していて、それが彼女の本には感じられなったのだと思う。
 ところが今回読んだ『ロック母』という作品はえらく良かった。なんてことのない話なのだが、生命力に溢れていて、大海原に漕ぎ出すようだった。私が変わったのか、彼女が変わったのか、両者が変わったのか、こういう感覚を味わえるのは幸いかな。

投稿者 shiori : 10:23

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