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2005年10月26日

日記: 10/26

今日、本屋でおもしろい人を見かけた。
漫画買っちゃおうかなあとコミック棚でめぼしいものを探していたら、奥の方から何やら声が聞こえて来る。耳をそばだてると、どうやら男性社員が新入りバイトに仕事を教えているようだった。奇妙に人を苛立たせる声色で私は不愉快になると同時に声の主はどんな顔をしているのかと好奇心がわいて、声のする方へわざと近付いた。
その男はおばさんと女子学生を相手に、返本のダンボール詰めの方法を教えているようだった。男は話に夢中で、私が至近距離1mのところまで近寄っても気付く気配はない。口角に泡をためて、まくしたてたままだ。一方、私に気付いた女性二人は男を一瞥したあと、困ったように私を見た。
(すいません、私たちも困ってるんですよ)
(でしょうねえ、いますよねえこういうヤカラ、ご愁傷様です)
という会話を目で交わす。
私は男の顔をまじまじと眺めた。30代半ば(実齢はもっと若いかも)、電気の実験をするでんじろう先生をぐっと貧弱にして、大人にきびで肌を凸凹にした感じの男である。あまりにもそのまんまなので思わずにんまりしそうになったところ、視線に気付いたのか、男はおもむろに私を見た。そして、やはりというべきか事もあろうにというべきか、男は得意げな視線を投げてよこし、一段と声高らかに話し始めたのである。
ああ、なんたる小市民!神様、お許しを!
思わず人間の浅はかさを恥じた私は本棚の陰に身をひそめた。
「だんボールをむだづかいしたくないんだつまりアタマ、をつかえばこれくらいのりょうははいるはずさいしょはなにもかんがえずこうやっていれていくアタマ、はいらないそれでここにカブトムシ3びきのすきまができたさてどうする、ってハナシなんだけどほらこうやって、い、れ、れ、ば、のこりカブトムシいっぴきこおおおおおおやってアタマ、つかえばほらできあがり!」
なにしろ早口なのである。カ、カブトムシ?!という私の驚愕もなぎ倒してしまうくらい早口なのだ。しかも劇団四季もたじたじの活舌の良さ、呪文をかけられているような気分になってくる。こっそり盗み見ると、バイトの女性たちもそろって遠い目をしている。こりゃジョウモノだ、と身を乗り出そうとしたその時、おもむろに天の声が響いた。
「レジお願いしま〜す」
彼の口上はやむなく打切られて彼女たちは九死に一生を得た格好、私は、といえば無念な表情で店をあとにしたのだった。
カブトムシって?
というのが最大の謎なのだが、そういう本屋専門裏用語が存在するのか、はたまた彼独特の単位表現なのか、もしやアイツはブリーダー?
などという香ばしい疑問が浮かんでは消え。あの店でバイトしたら謎は解決するんだろうなあ・・・ん?それも悪くない・・・
おっと、うっかり悪魔にそそのかされるところであった。あぶない、あぶない。

投稿者 shiori : 11:18

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