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2005年07月11日

日記: 7/11

私のステップ(台を使ったエアロビクス)のT先生は多忙な人で、年に3、4回は海外のコンベンションに出かける。赴く場所は実に多彩で、ロサンジェルス、上海、ブエノスアイレス、モスクワ、先日はイスラエルにまで行ったらしい。なんでも中東はフィットネスが盛んで女性もあの黒い装束を脱ぎ捨ててナイキのウエアに身を包みエアロビクスに興じるのだそうだ。日々報道されるデインジャラスな雰囲気とにわかに合致しないのだが、戦争と健康は別腹ということなのだろうか。
というのはさておき、本日の話題はT先生のアシスタントについてである。T先生はインストラクターを育成するワークショップを開催したりビデオを発売したり、と日本のフィットネス界では有名な人なのでアシスタントなる人を抱えている。T先生の留守中には彼女がレッスンの代講にやって来る。
私と同じ年くらいの快活な彼女は教え方も上手だし、ステップの動きもなかなかセンスがいい。常にちょっとハイレベルの動きを強要するので、こっちも必死になってついていこうとがんばる。結果として充実感と満足感が得られる。何でもそうだが、育成のポイントは精確な目標設定に尽きますね。
ところが一つだけ問題がある。
動きが完成して最後に通してみましょうという段にかかる、いわばキメの音楽が問題なのである。普段はそのへんの適当なポップスなので聞き流しているが、そうやって油断していると痛い目に遭う。だしぬけに『ファイナルカウントダウン』がかかることもあるからだ。(数年前ここに書きましたね)そうなると「ん〜ぱららっぱ〜ぱらぱらら」に合わせて踊らなくてはいけない。笑ってしまってどうにもならないけれど、百歩譲ってこの曲を選ばんとする意味は理解できる。威勢がいいから踊りやすいのだ。
しかし今日、そのアシスタントがチョイスした音楽はこともあろうに『デスペラード ユーロビート版』なのだった。デスペラードですよ、哀愁溢れる男のバラードですよ。ちなみにエアロビクス使用の音楽は必ず16分表打ちのバスドラが入っている。あの名曲がどんな具合になるかというと、

「どどどどデ〜どどスペラアドどどど」

となってドン・ヘンリーも椅子から転げ落ちたという話だ。さらにBPMをいじっているので必要以上に声が高い。いわゆる昭和ラジオ声ってやつだ。
しかもである。そのアシスタントときたらやたらとかけ声を発するのだ。ライブなんかでかっこいい演奏をすると「ヒュ〜」とか「イエイ」とかかけ声をかける、まあ基本的にそれと同じなのだけどエアロビクスのはどうも恥ずかしくていけない。かけ声を意訳すると「あんた、かっこいいぜ」ではなく「アタシ、ていうかアタシたちイケてる?みたいな」となるわけで、そういう盲目的な一人称の世界に自分も組み込まれてるのかと思うとぞっとするのだがそんな思いは虚しく、アシスタントは幾度となく雄叫びをあげるのだった。『デスペラード』と雄叫びが出逢うと(まさに未知との遭遇だ)どんな塩梅かというと、

「どどどどデ〜どどスペラ〜ドFU〜U」(最後はしゃくる)

いや、正確にいえばその「FU〜U」に応じてそこらかしこの生徒たちが「FU〜U」としゃくり返すものだから

「どどFU〜Uデ〜どどスペラFU〜FU〜FU〜FU〜」(いちいちしゃくる)

となって平井堅もうっかりカミングアウトしてしまったという話だ。(何を?)
ともかくですね、踊れたもんじゃないです。頭がショートしてせっかく覚えた動きもすべてとんでしまった。汗をふくふりをしながら、タオルを顔に押し付けて痙攣笑いが治まるのを待つ羽目にあった。
選曲はともかくT先生はへんちくりんなかけ声をかけたりしないクールな感じなのに、そのあたりはのびのび教育なのだろうか。先生だからとはいえ「あなたのかけ声、寒いわよ」とはなかなか言いにくいものなんだろう。「口くさいよ?」と同じくらい難しいのかもしれない。
T先生とアシスタントの無言の攻防をあれこれ想像するうちに、今日のレッスンは終わった。ふう、疲れた。

投稿者 shiori : 13:40

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