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2005年06月21日

日記: 6/21

調べたいことがあったので『cobalt』という雑誌を手に取る。
往年の氷室冴子、新井素子に代表される集英社コバルト文庫の月刊誌なのだが、こういう類いの本を読むのは久しぶりだ。中学の時に友人に借りて読んだ以来だと思う。それでもぱらぱらと頁を繰るうちに、当時感じていた違和感がまざまざとよみがえってきた。
それはいうなれば「ファンシー」に対する抵抗感だと思う。
世の中には実に多くのファンシー因子がはびこっていて、例えばキャラクターもの(ディズニー含む)、ある種のアニメ、プレステのソフトはもちろん、丸文字、絵文字、片仮名の平仮名表記(みるくせえき)、いにしえ表記(今度会いませう)、声優、魔法、伝説、二重まぶたの整形、ソーイングセット、花柄のトイレットペーパー、ペロペロキャンディー、フルーチェ、水玉(ドット大きめ)模様のあれこれ、と一晩中でも羅列できそうなほどだ。
ファンシーの基本概念はナマものの隠蔽だと思うんだけど、隠すことでその存在を意識するという作用もあって(影によって光の存在を理解する)、つまりコバルト文庫はセックス描写なしにセックスを意識させるわけなんですねえ。屈折してますよねえ。わざとらしく隠蔽しているもんだから、逆に読者の性的な昂りが露呈して生々しいのよねえ。
でもファンシーとヲタクというのは赤ワインとブルーチーズくらい相性抜群なので、各種ファンシーグッズは固定の購買層を得たも同然、ありゃ儲かりまっせ。と思った。
そういえばザ・ファンシー男といって思い浮かぶのは以前勤めていた塾の上司。ミスタードーナツの景品を嬉しそうに集めたり、プーさんの消しゴムを大事そうに使ったり、数学至上主義(数学ができないのは馬鹿と即座に決めつける)で、おまけにチェリーボーイ(女子社員推測)、落とし所がねぎしょって歩くような人だったので私もずいぶん楽しませてもらった。
がたがたぴーぴーうるさい時にはさりげなく下ネタを言うと、しゅるしゅるとしぼんで静かになる。
「この部屋なんか臭くないですか?う〜ん、精液臭いっていうか」
などと言うとうつむき加減で無言で去っていくMr.FANCY・・・
やはりファンシーはナマものに弱いというか下品な女に弱い?
それでも私が辞めるとき涙ぐんだのは彼だけだったし、なんというか徹頭徹尾ファンシーな人で、嫌いじゃなかったなと思い返している。元気かな?

花村萬月『ブルース』を読み終える。
どすの利いたいい作品だった。あとがきで本人も書いていたが、小説の技術が未熟なところがあって視点がばらばらだったり、言葉遣いがこなれていなかったりするところもあったけれど、ほとばしるような情念やどうしようもないやるせなさが満載で、けっこうぐっときた。
読んでて赤面してしまうような男と女の会話も新鮮だった。
「お嬢さんは、もうお家に帰る時間だ。さあ、いい子だから」とか「あたしたち、溶けたよね・・・」とか何とか言って、いい男と美人が愛を囁く。
人間誰しも時と場合によってはそこそこのセリフを口にしているとは思うが、他人の場合はなかなか耳にするチャンスはないし、自分の場合は頭がぼうっとしちゃってるし、そういう意味ではフィクションはいいですね、覗き見の感覚で思いきり笑えるから。読みながら頭の中で(笑)(苦笑)(爆笑)の文字が飛び交って忙しかった。
また花村萬月がやる気まんまんで、これがまた。
そういうことも含めて分厚いのに一気に読める希有な本。

投稿者 shiori : 14:10

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