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2007年02月24日

カタカナ: エリート

 少々前置きを。見知らぬ言葉に出会えば辞書をひくわけだが、英語の場合だと私はリーダーズ英和辞典(研究社)と新英和大辞典(研究社)を併用している。前者は学生時代から使っている馴染み深いもので(現在は電子版)たいていはこれ一冊で事足りるとても優秀な辞書である。しかし語源を詳しく知りたい時などは後者が必要になる。私はもう学問をしていないのでそういう機会も減ってしまったけれど、言葉の語源をたどるのはおもしろい。
 例えばファンタジー(fantasy)という言葉がある。意味は「とりとめもない想像、気まぐれ、空想的作品」、phantom(幽霊)やphantasm(幻)と同語源だと書かれている。それでphantasmを調べると、それは「輝くこと、現れること、目に見えること」というギリシャ語から派生しているのがわかる。ふむふむ。なんてやっているとあっという間に日が暮れてこの穀潰しなどと罵られるので、お遊びもほどほどにしなくてはいけない。

 それでエリート(elite)である。
 前述の要領で辞典を引くと、古仏語の「選ぶ」という動詞から派生した言葉であり、意は「社会的、知的、職業的に選ばれた者、精鋭」となっているのだが、おもしろいのは(しばしばけなして)と注意書きしてある点である。
 確かに「あいつはエリートだから」というセリフには羨望とやっかみと侮蔑がたっぷり込められていて、親愛の情に満ちた言い方とはいえないだろう。しかし考えてみたら気の毒な話である、人の何倍も能力があって努力もしていて社会の中枢を担う精鋭だというのになぜけなされる、むしろ尊敬してほしいくらいだ、というその発想がさらなるやっかみをあおるので穏やかに密やかに、エリートなのにエリートではないふりをしなくてはいけない。エリートは大変なんである。
 ちなみに東大卒高級官僚である父に「自分をエリートだと思うか」と聞いたところ「僕がエリートでなきゃ誰がエリートなんだ」とにっこり笑ってピースサインをするので、黙ってたらわからないから「E・L・I・T・E」と背中に墨でも入れれば、と助言しておいた。自分をエリートだと公言する時点で、その人はエリートではないという話もある。かくいう私はもちろんエリートではない。

投稿者 shiori : 12:01

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