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2006年03月22日

日記: 珍獣ども

私の住む界隈は住宅地につきスーパーマーケット激戦区、成城石井やプリンスホテルや東急百貨店といった高級店からジャスコ、イトーヨーカドー、マルエツ、東急ストアに加え、ダイクマ、ドンキホーテに到るまで各種店舗がずらりと軒を連ねている。その中でなぜあえてサミットを選んだのかと言えば、実家からも新居からも徒歩5分という近さに加え、広々として清潔な店舗に整然と並べられた激安生鮮食料品ということになるだろう、午前1時まで営業の店舗は常時繁盛しており人気の高さをうかがえるのだが、まあはっきり言ってイモであることに相違なく、慢性的病理ともとれるあのセンス、食料品以外はちょっと買えたものではない。私だって金はないが、もう少し人生格好つけて行こうぜ、と叱咤したくなる衣服や日用雑貨たち。しかしもちろん購入する人々はいて、彼らには彼らの世界があってノープロブレム、需要と供給が合ってこそ富はもたらされるのであって、サミットは彼らが買い物を終えて一服つく場所を用意するといった感謝ぶりなのである。
その名も「私の喫茶室」。ちょいと腰かけて無料でお茶を飲める、高速道路のサービスエリアといった趣き、どうやら併設のパン屋の品は持ち込んでよいことになっているようで、例えば購入したソーセージパンを温めてソースをかけたいという人のために、電子レンジや調味料の類いも用意されていて苦しゅうない、なかなか気が利いているではないか。しかしサミットの好意虚しく、私の喫茶室は悪の巣窟なのだった。向こうから紙コップを持ったおばさんが小走りにやって来て何をするのかと思えば、おもむろにソースを掴んでどぼどぼコップに注ぎすたこらさっさ、ひょいと横を見れば中年男性がリュックからサトウのゴハンを取り出し電子レンジでチン、同じく持参のカップラーメンにお湯をじょぼじょぼ、ここは君の家ではないのだよと注意すれば「え、違うんですか?」ときょとんとされそうな気配、ソース泥棒しかり、まったく悪びれないのである。
こんなことでいいのかサミット、しかし自分の蒔いた種、妙なものを売るから妙な客が集まるのであって、珍獣たちの彷徨は仕方ないのだと納得したところで一階の本屋に立ち寄り書架を眺めていて「ん?」と思ったのは、脇で立ち読みする女性はおばさんなのにおじさんの臭いがするからで、盗み見るとあれまあ、おばさんの格好をしたおじさんではないですか、カーリーヘアのかつらに赤い紅、お尻をきゅっと突き出していてうふふ、またもや珍獣に出会ってしもうたのである。さらに香ばしいことに、彼ないし彼女は虫眼鏡片手に本を熟読しており、わ、わらってよかですか、背表紙を覗き込むと『信長の棺』という文字、堪え切れずにその場を後にしたのだった。以来サミットに足を運ぶ度に彼らを目で探し、再び見かけてはなんだか得したような心持ちになる自分に気付き、自らも珍獣に仲間入りせぬよう戒める毎日なのである。

投稿者 shiori : 12:26

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