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2005年05月18日

日記: 魅惑のフレンチ

久々にきちんとしたフレンチを食べに行く。
その店はなかなか美味な料理を食べさせるのに、いつのぞいても人気はまばらで、採算が合うのか他人事ながら心配になる。その日も結局、ディナーを頂いたのは私たちを含め2組だった。
いつ来るやとも知れぬ客のために、仔羊やら仔猪やらの獣たちを下準備しておくというのもご苦労な話で、いやむしろ出番を迎えることなく冷蔵庫の隅で黒ずんでいくウサギちゃんを思うと胸が痛むほどだ。まあしかし、そのあたりは商売だから翌日のランチで安く売りさばいてしまうのだろうが。(その証拠にランチは毎日大入り)

メニューとワインを吟味する。
知り合いのおじさんで、気が遠くなるほどの時間をかけてメニューを選ぶフレンチ好きがいるのだけれど、ハタチの頃私は彼を見て、何とキザな!と舌打ちして、フォアグラのソテーをご馳走になりながら「ハンバーガーの方が美味しい」と吐き捨てていた。
とんだ皮かむり野郎であった。悦んだことのない女であった。
今やドレスアップの功罪(官能と憂鬱)を知っているので、フレンチの存在意義をすんなり理解できる。
よく考えてみれば、衣服や言葉遣いや話題や音楽や人間関係さらには人種までも指定できる料理(たとえばヤクザはフレンチを食べない、なぜならフォークとナイフを使えないから)、そういう形式や文脈をもつ食文化は他にはない。それが善であるわけではないが、その必要十分な在り方が素晴らしいと思う。(善悪の話をしだすと、途端に色気と毒気が消えるもの)
ということで、フレンチへの愛をこめてオーダーする。

ホワイトアスパラガスの温泉卵とキャビア添え 空豆のソース
フォアグラのソテー 季節の野菜のポトフ乗せ
金目鯛のオマール海老ソースの付け焼き 野菜のタルト添え
牛ヒレのソテー 山菜の素揚げ添え
ワインは白 サンセール

と書いているとまた食べたくなるほど、どの料理も美味だった。
しかし、オーダーをとってからすべてを作り始めるらしく、鴨の首をへし折って肝臓を取り出すところから始めているのかと思われるほど待たされ、おかげで本当にできたての皿に仕上がっていたものの、こちらはパンを食べ過ぎワインを飲み過ぎ、メインに辿り着く頃には寄り目の赤鬼のような私だった。
でもそこからさらにふんばって、チーズも食べる。
30種類ほどの腐敗物がワゴンに乗っておごそかに登場し、ああだこうだ説明を聞き、臭いやつベスト3を切ってもらう。
私の友人は、女性の股ぐらに顔を押し付けるようになって以来ようやく臭いチーズが好きになったと言っていたが、そのような刺激がなくても臭いチーズは美味しいです。
ものによっては、ワキガやおしっこの臭いがしますが美味しいです。ということは、ワキガやおしっこも美味しい・・・ことにはならずにすんでいる。嗅覚と味覚は別ですからね。そこを混同すると「なんだかこれマッチの味がする/食ったことあんのかよ」という不毛なやり取りをすることになる。
それでも地球生物は鼻と口が隣接していて幸運でした。香りを楽しめば料理は二度美味しいし、ニコちゃん大王(Dr.スランプに登場する、顔に足のついた宇宙人)のような悩みもない。彼らはおしりの近くに鼻がついているので「うかつにおならをすると、く、くさいのだ」そうだ。ははは。
話はフレンチに戻るのですが、チーズの後はデザート、プチフールにコーヒー、最後にはハーブティーまでサーブされた、さあ帰ろうとチェックをして店をあとにした帰り道。
「なんか妙に安かったね」「やっぱり?」
と、領収書を子細に見直すと、なんと、肉2皿分がついていなかったのだった。しめて7,000円。なんと間抜けな。私たちにも得した感はまったくない。とるものはきっちりとって、はらうものはきっちりはらってこその満足感が台なしだ。やはり流行っていない店というのは何かしら問題のあるものだと納得する結果となったのだった。あのギャルソンがこっぴどく怒られている図を想像すると、返しに行くかとも思ったが、行ったところで受け取らないはずだし、また食べに行けばよいというところで落ち着いた。
最後に味噌がついたものの、全体的にはいい店。
新横浜のHANZOYAというレストラン。

投稿者 shiori : 14:47

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